天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 昨日一日考えてみたけど、でも、やっぱり梅吉兄さんの考えはよく分からない。いや、きっと一生理解できないだろうと私は一つ乾いた息を吐き出す。

 だけど栞告も本当にいいのかな。今日、栞告にそれとなりに兄さんのことを話したけど……。私が教えるまでもなく、栞告は知っていた。ううん、栞告だけじゃなく、みんな知ってる有名な話なんだって。

 でも、いくら兄さんのことが好きだからって、栞告ってば本当にいいのかな。だって自分以外の女の子と遊んでばかりいるんだよ? それでも許せるの? 好きでいられるの? それとも私の心が狭いのかな。

 ……ううん、嫌なものは、やっぱり嫌だよね。我慢することないと思う。兄さんみたいな男のことなんて、さっさと忘れちゃえばいいのに。

 っと、いけない、いけない。今は部活中だった、集中しないと。

 私はぶんぶんと頭を左右に振ると、気を引き締めて素振りを続ける。

 だけどその矢先、叫び声のようなものが道場の外から聞こえて来た。

 なんだろう、私以外の部員にも聞こえたみたい。みんなして扉の方に行き、ひょいと外を眺めている。

 私も真似て顔をのぞかせると、遠くの方に袴姿の梅吉兄さんが見えた。兄さんってば、なにをしてるんだろう。袴を着てるってことは、部活中だよね。だけどランニング中でもなさそうだ。困惑顔をした兄さんは全力疾走していて、なんだか急いでるみたい。

 そんな兄さんから遅れて、今度は他校の制服を着た女生徒の姿が目に入った。その女生徒はなにやら喚きながら忙しなく首を左右に振っていたけど、私達の方に顔が向くと……。

「ああっ! アンタ、昨日の……!」

「えっ、昨日? ……って、ああっ!?」

 思い出した――と私が声を上げるよりも早く、女生徒は私に向かって突っ込んで来た。
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