天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 どうして私までこんな目に……。だけど、ご立腹顔の穂北先輩を前に、口に出す勇気なんかない。私達は言われるがまま、ぴしりと背筋を伸ばして姿勢を正した。

 穂北先輩は短い前髪のせいで露わになっている太い眉をぴんととがらせ、鋭い目付きで主に駒重さんを見つめて言う。

「君が天正を追いかけ回したせいで、今日は全然稽古ができなかったではないか。大体、君は他校の生徒だろう。ちゃんと入構許可は取ったのか? なにっ、取っていないだと? まさか無断で入ったのか!? その上、あのように騒ぎ立てて……」

「はい、本当に済みませんでした」

「全く、なにを考えているんだ。だが、この件はウチの天正にも大いに原因はある。
 しかし、なぜに君はあのような男にそこまで好意を寄せているんだ。もう少し男を見る目を養った方が賢明だと思うぞ」

「そうですよ。梅吉兄さんは、やめた方がいいと思います」

 穂北先輩の言う通りだ。私も先輩に同意する。

「兄さん、言ってましたよ。彼女は作らない主義だって。それと、なんだっけ。この世の女の子はみんな俺のものだとかなんとか……」

「それなら俺も聞いたことがある。将来は総理大臣になって一夫一妻制を廃止し、ハーレムを築くとも言っていたな」

「知ってるわよ、そんなこと。なによ、二人して口をそろえて。確かに梅吉はそういう性格よ。けど……、それでもアタシなら梅吉を変えられるって、そう思ってて……」

「いや、無理だろう」

「はい、無理ですね」

「ちょっと、そんな簡単に決めつけないでよ!」

 駒重さんは顔を強張らせ、ばんばんと激しく床を叩いて訴える。
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