天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「そうは言っても、天正を更生させるという発想自体、俺にはバカげているように思えるが。猿に一日で芸を仕込めと言われた方が何百倍も現実的で望みがある。どちらか選べと言われたら、俺は迷わず猿を選ぶぞ」
「そうですね。私も猿を選びますね」
「ちょっと。なんでさっきから二人はそんなに意気投合してるのよ」
「投合もなにも天正を知ってる人間なら、百人中百人が同意見だと思うが」
「そうですよ。そもそも、どうしてそこまで兄さんに固執するんですか? 駒重さん、しっかりしているように見えますし、兄さんのことはだまされたと思って、きっぱりと忘れた方がいいですよ」
私や穂北先輩だけじゃなく、周りの弓道部員達からも私達を支援する声が自然と上がる。
だけど駒重さんは頑固みたい。騒がしい外野に向け、「シャラップ!!」と叫び跳ね除けた。
「なによ。さっきから黙って聞いてれば、好き勝手言ってくれちゃって。そう簡単にあきらめられる訳ないじゃない。だって私と梅吉は、運命の赤い糸でがっしりと結ばれているのよ」
「運命の赤い糸だと?」
「ええ、そうよ。あれは忘れもしない昨年の、木枯らし荒ぶ秋も終わりかけの日のことだった……。
その日、私は彼氏とちょっとしたことが発端で口論になって、そのまま引っ込みがつかなくなって。結局、ケンカ別れをしちゃったの。それで公園のベンチで泣いていたら、目の前に現れたのが梅吉だった……。
梅吉は、恋に破れ傷付いていた私を優しく慰めてくれて。まさにあの瞬間、運命の出会いだと思ったわ……」
「成程。失恋した直後、ふらりと目の前に現れた男に都合のいい言葉をかけられ、単純にもころっと惚れてしまったということか。なんだ、よくある話ではないか」
「ちょっと。人の大切な思い出を、そんな貧相な言葉で片付けないでよ!」
「このでこっぱち!」と駒重さんは穂北先輩の額目がけ、怒り任せにでこぴんをした。
それを真面に喰らってしまった先輩は声にならない悲鳴を上げ、ひどくもだえる。
「そうですね。私も猿を選びますね」
「ちょっと。なんでさっきから二人はそんなに意気投合してるのよ」
「投合もなにも天正を知ってる人間なら、百人中百人が同意見だと思うが」
「そうですよ。そもそも、どうしてそこまで兄さんに固執するんですか? 駒重さん、しっかりしているように見えますし、兄さんのことはだまされたと思って、きっぱりと忘れた方がいいですよ」
私や穂北先輩だけじゃなく、周りの弓道部員達からも私達を支援する声が自然と上がる。
だけど駒重さんは頑固みたい。騒がしい外野に向け、「シャラップ!!」と叫び跳ね除けた。
「なによ。さっきから黙って聞いてれば、好き勝手言ってくれちゃって。そう簡単にあきらめられる訳ないじゃない。だって私と梅吉は、運命の赤い糸でがっしりと結ばれているのよ」
「運命の赤い糸だと?」
「ええ、そうよ。あれは忘れもしない昨年の、木枯らし荒ぶ秋も終わりかけの日のことだった……。
その日、私は彼氏とちょっとしたことが発端で口論になって、そのまま引っ込みがつかなくなって。結局、ケンカ別れをしちゃったの。それで公園のベンチで泣いていたら、目の前に現れたのが梅吉だった……。
梅吉は、恋に破れ傷付いていた私を優しく慰めてくれて。まさにあの瞬間、運命の出会いだと思ったわ……」
「成程。失恋した直後、ふらりと目の前に現れた男に都合のいい言葉をかけられ、単純にもころっと惚れてしまったということか。なんだ、よくある話ではないか」
「ちょっと。人の大切な思い出を、そんな貧相な言葉で片付けないでよ!」
「このでこっぱち!」と駒重さんは穂北先輩の額目がけ、怒り任せにでこぴんをした。
それを真面に喰らってしまった先輩は声にならない悲鳴を上げ、ひどくもだえる。