天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「おい、いきなりなにをする!? 痛いではないかっ! それと、でこっぱちと言うな!」

「なによ、うるさいわね。でこっぱちは、でこっぱちでしょう!」

「くっ……、だから、でこっぱちと言うなと言うに……!
 とにかく天正のことは一刻も早くあきらめた方が身のためだ。俺は中学の頃から六年、毎日アイツに堅実になれと言い続けてきたが、一日たりとも改心した日などなかったぞ」

「ふっ……、それがなによ。時間なんて関係ないわ。あきらめるなんて男らしくもない。根性なしのアンタは、猿回しでも目指せばいいんだわ。この、でこっぱち!」

「だから、でこっぱちと言うなと言ってるだろう! 俺を愚弄する気かーっ!!?」

「げっ、穂北がキレたっ!?」

「おい、穂北。相手は女だぞ、落ち着け!」

「ふんっ。部長だかなんだか知らないけど、一度も梅吉に勝てたことがない癖に!」

 刹那、穂北先輩は雷にでも撃たれたような衝撃を受け。口を閉ざすと背を丸め、とぼとぼと部屋の隅に移動した。

 そして腰を下ろし、体育座りをした先輩の周りには、どよどよと負のオーラが漂い出した。

「あーあ、穂北が一番気にしてることを……。
 どうするんだよ、落ち込んじまったぞ」

「ああ見えてなに気に繊細だからなあ」

「……あの。私、そろそろ帰ってもいいですか?」

 なんだかすっかり混沌とした空気の中、私は居た堪れなくなり。なかなか言い出せなかったその一言を、それでも私だってまだ部活中だもん。

 どうにか口に出すと、ひっそりとその場を後にした。
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