天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 家に帰った私は、そのまま自分の部屋にこもった。本当はお腹が空いてたけど、でも、梅吉兄さんに会いづらくて。だから食欲がないってウソついて、食卓には行かなかった。

 だけど、あとで藤助兄さんが、おにぎりとだし巻き卵、竜田揚げに漬物、それからおみそ汁を持って来てくれた。

 兄さんに、
「無理しないで食べられるだけでいいからね」
なんて言われちゃって、ちょっと罪悪感。だけど食欲には勝てないよね。ぺろりと全部食べちゃった。

 そんなせっかくのおいしかった夕食も、だけど素直には喜べなかった。藤助兄さんをだましちゃったこともあるけど、それ以上に梅吉兄さんのことが気がかりだった。兄さんを叩いた右手が時間が経っているのに、まだ、じんじんと痛んだ。

 叩いたのは、やり過ぎちゃったかもしれない。感情に流されやすいの、私の悪い癖だよね。

 一人反省していると、突然コンコンと扉を叩く音が聞こえてきた。私が返事をする前に、外側から勝手に開いて……。

 その隙間から顔をのぞかせたのは、予想がついていたけど梅吉兄さんだ。

 どうしよう。やっぱり怒ってるよね……?

 ばくばくと跳ね上がっている心臓をどうすることもできないでいると、梅吉兄さんは、
「なあ、牡丹。少し上に行かないか?」

「えっ。上って……?」

 思ってもいなかった言葉に、私はつい呆気に取られる。こてんと首を傾げさせる私に、梅吉兄さんは、くいと天井を指し示した。

 私は訳が分からないまま兄さんの指先をなぞり、ゆっくりとその先を見上げていって……。
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