天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「あのよう、牡丹。悪いんだけどさ。多分、親父には会えないぞ」

「へっ!? 会えないって……?」

「誰も親父には会ったことがないんだよ。俺達がここで暮らすようになって随分と日は経つが、親父が訪れたことは一度もない」

「会ったことがないって、一度もですか?」

「ああ、一度も」

 梅吉さんは容赦なく、きっぱりと言い直す。

 それから、
「ちなみにこの家は天羽のじいさんが管理してて、じいさんは親父とは昔からのよしみらしくて俺達の面倒を見てくれてるんだ」
 最近は仕事で出張ばかりだから家を空けてることの方が多いけどな、と教えてくれる。

「つまり天羽のじいさんが俺達の父親代理ってとこだな。なあに、牡丹よ。話せば別に長くもないが、ここにいる俺達は、れっきとした腹違いの兄弟だ。
 親父は大の女好きで色んな女に手を出し、子どもを作ってはどっかに消え。お袋達は女手一つで育ててくれたが、残念ながら死んじまった。他に頼れる身内がいないもんだから、俺達はこうして一つ屋根の下、兄弟力を合わせて暮らしてるって訳さ」

「はあ、そうなんですか」

「そうなんですかって、他人行儀な。牡丹だって今日からその仲間入り、天正家の一員だ。お袋さんが死んじまって行く当てがないから、ここに来たんだろう?」

「それは、そうですけど……」
 大方の事情は分かった。

 けど、でも。

「それじゃあ私は、なんのためにここに……」

 ずるずると塩をかけた青菜みたいに、私の全身から力が抜けていく。

 そんな私の肩に、梅吉さんは、ぽんと軽く手を乗せた。
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