天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「うわっ……!」

「どうだ、気持ち良いだろう」

「はい、」

「とっても……!」と私は夜風に当たりながら後を続ける。

 さっきまで張っていた頬の筋肉は、いつの間にかすっかり解かされ。私はもう一度、短い歓声を上げた。

「私、屋根なんて初めて登りました」

「それはもったいねえなあ。こんなに気持ち良いのに。周りが明るいせいで星はあまり見えないが、これはこれでなかなか良い景色だろう。
 でも、落ちないよう気を付けろよ。
 あーっ。風、気持ち良いなあ。……なあ、牡丹」

「はい、なんですか?」

「お前、男と付き合ったことないだろう」

「えっ……。なっ……、なんですか、いきなり!?」

「ふうん、やっぱりな」

「やっぱりって、まだなにも言ってないじゃないですか!」

「なんだ。それじゃあ、あるのか?」

「いえ、ありませんが……」

 確かに梅吉兄さんの言う通りだけど。これからも男と付き合う所か、結婚する気もさらさらないけどさ。でも、だからってこうも簡単に決めつけられるのはなんだか癪だな。さらに笑われるのは、もっと癪だ。

 兄さんってば、デリカシーの欠片もない。けらけらと笑っている兄さんに、私はむすりと眉間に皺を寄せた。
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