天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
私はただじっと、月光を受け薄らと影のかかったその横顔を一心に見つめ続ける。
梅吉兄さんは、ウソつきだ。私には分かる。多分ウソをつくことで、自分のことを慰めているんだ。
そろそろ戻るかという兄さんの声に、私はなにも言えないまま、黙って従って立ち上がった。だけど意識が散乱してたんだと思う。ずるりと足が滑って……、
「きゃっ!?」
そのまま体が下に引っ張られていった。
だけど、
「……っと、だから気を付けろって言っただろう」
梅吉兄さんが腕を伸ばし、とっさに私の体を支えてくれた。私は飛び上がった心臓をそのままに安堵の息を吐き出すと、兄さんにお礼を言った。
けれど兄さんは聞いているのか、いないのか。私を抱き寄せると、それから、ぎゅっと強く抱き締めた。夜風に当たっていたせいだろう、兄さんのひんやりとした体温が私の肌に染み込んでいく。
私は、
「兄さん……?」
兄さんの胸板に向かって声をかける。
兄さんは、
「そうだなあ」
そう呟いてから、
「かわいい妹に免じて、しばらくは女遊び、やめようかな」
「え……?」
えっ、えっ……?
兄さん、今、なんて言ったんだろう。女遊びをやめるって、本当にそう言った? それとも私の聞き間違い?
私が混乱していると、兄さんは私の顔に自分のそれを寄せてきて――……。おでこに温かくて柔らかい感触が降って来たのと同時、ちゅっと軽い音が鳴った。
えっと、今のはもしかして……。きっ、ききき、キス――……!??
私は熱を持った額を手で押さえながら、兄さんからとっさに距離を取った。
「なんだよー。でこくらい別にいいだろう?」
つんと口先をとがらせる兄さん。
兄さんってば私のこと、絶対にバカにしてる……!
私はふるふると肩を大きく震わせて、
「ちっとも良くなーいっ!!」
星空の下、思わず大声で叫んだ。
梅吉兄さんは、ウソつきだ。私には分かる。多分ウソをつくことで、自分のことを慰めているんだ。
そろそろ戻るかという兄さんの声に、私はなにも言えないまま、黙って従って立ち上がった。だけど意識が散乱してたんだと思う。ずるりと足が滑って……、
「きゃっ!?」
そのまま体が下に引っ張られていった。
だけど、
「……っと、だから気を付けろって言っただろう」
梅吉兄さんが腕を伸ばし、とっさに私の体を支えてくれた。私は飛び上がった心臓をそのままに安堵の息を吐き出すと、兄さんにお礼を言った。
けれど兄さんは聞いているのか、いないのか。私を抱き寄せると、それから、ぎゅっと強く抱き締めた。夜風に当たっていたせいだろう、兄さんのひんやりとした体温が私の肌に染み込んでいく。
私は、
「兄さん……?」
兄さんの胸板に向かって声をかける。
兄さんは、
「そうだなあ」
そう呟いてから、
「かわいい妹に免じて、しばらくは女遊び、やめようかな」
「え……?」
えっ、えっ……?
兄さん、今、なんて言ったんだろう。女遊びをやめるって、本当にそう言った? それとも私の聞き間違い?
私が混乱していると、兄さんは私の顔に自分のそれを寄せてきて――……。おでこに温かくて柔らかい感触が降って来たのと同時、ちゅっと軽い音が鳴った。
えっと、今のはもしかして……。きっ、ききき、キス――……!??
私は熱を持った額を手で押さえながら、兄さんからとっさに距離を取った。
「なんだよー。でこくらい別にいいだろう?」
つんと口先をとがらせる兄さん。
兄さんってば私のこと、絶対にバカにしてる……!
私はふるふると肩を大きく震わせて、
「ちっとも良くなーいっ!!」
星空の下、思わず大声で叫んだ。