純恋歌
葬儀でその人の人生がわかると言うが、参列者の態度を見る限り前田の人生はなんだったんだろうと虚しくなった。

中学卒業後、色々悪い事をしていたと噂がひっきりなしだった為、誰から見ても手のほどこしようのない馬鹿な息子だったと思うが出棺の時

「いやぁぁぁあ!連れて行かないで!連れて行かないで!」

泣き崩れる前田の母親の姿を見てどんなろくでなしの息子でも親より先に亡くなる事がどれだけ親不孝なのか僕の胸に深く突き刺さった。

出棺のクラクションが鳴り、みんな手を合わせ黙祷する中

追悼を理由に追悼暴走する数台のバイクが大きな排気音を撒き散らし低速で走り出した。

「チッ、全く不謹慎な」

同じ出棺を見送った親族から声が聞こえた。

「帰るか」

「そうだな」

大輔の言葉を聞きその場を立ち去ろうとしたら

「よう!前田にイジメられてたのに来たのか?」

僕を見て少し馬鹿にした態度で岡田が話しかけてきた。

「小学校の時は仲良かったから」

僕と前田は家は近くはなかったので放課後一緒に遊んだりはなかったが学校では割と仲良く過ごしていた。

運動神経がよくスポーツとなるとクラスは前田が中心となっていた。

「拓郎も来いよ!俺のチームな!」

ドッジボールやサッカーでも運動神経が悪い僕を率先して自分のチームに入れてくれたりと優しかった。
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