純恋歌
その場から歩き出すとみんな色違いのパーカーを着た男の子5人が楽しそうに話をしてた。

「10月以外に宮島にカップルで来ると宮島の神様が嫉妬して別れるらしいよ」

「なんで10月はOKなん?」

「神無月って神のいない月の10月は神様が居なくて、大丈夫なんだって」

「あ、でも最近男の神様を入れたから10月以外も大丈夫らしいよ」

「入れたってどうやって?」

「知らん!」

そんな根も歯も根拠もない噂話しに花を咲かせる人達の会話に思わず笑みがこぼれた。

私は父と弟の元に戻り

「お待たせ!」

「長かったけど糞?」

そう言う弟の脇腹を貫手で殴った。

「そういやさっきこんな話し聞こえたんだけどさ…」

男の子達の聞こえた話をした。

「あぁ、それデマよ」

「なんで?」

「だって俺彼女と10月に宮島来たけど別れたもん」

「は、は、は、はぁ!?あんた彼女居たん?」

「え、中2だから普通に彼女とか居るでしょ」

「いやいや、中2は普通彼女居ませんから!ちなみに今彼女は居ないでしょうね?」

「え?なんで姉ちゃんにそんな事教えないといけんのん?」

「はあ!?10月に別れて2ヵ月足らずで彼女作るとかしてたらあんたろくでもない男よ!?」

「つか、もうすぐ日付け変わって年明けるからこの話しは終わり!」

弟とそんなやり取りをしてると父は得意気に言った。

「大丈夫!まだ慌てる時間じゃない」

「うっせぇんだよ!オッサンは少し黙ってろ!」

そう私が言い放ったら日付けが変わり年明けとなり綺麗な花火が打ち上がった。

「日本の夜明けぜよ!」

花火を見ながらそう言う父親にイラつき

(年が明けただけでまだ夜明けじゃねえよ)

こいつに誘われても二度と年越ししないと決めた。
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