純恋歌
「僕が書く詩を亜依子が歌ってくれるのが幸せだから思わないかな」

中学3年生最後のクラスマッチの時、大輔に話した一生病気が治らず進行する恐怖。

1番近くで見てきた大輔だから大輔にとっても答える事の出来ない僕からの問いが苦しかったと思う。

「惚気やがって」

頭をぐしゃぐしゃしてきた。

「ちょっ!せっかくセットしたのに!」

「うるせぇ!みんなしてどんどんと幸せになっていって!はあぁ…ワシにも幸せ訪れんかのぅ!」

そう文句たらたらの大輔と今日訪れるのは上島剛の結婚式。

『人気ロックバンド3-Arrowsのベーシストの剛さんと人気アナウンサーの田中明菜さんが結婚を発表されました。2人の出会いは…』

タクシーの中で流れるラジオが耳に入ってきた。

「しかも剛はアナウンサーと結婚とか凄いよの」

奥さんの田中明菜さんは某テレビ局の朝の情報番組の顔として活躍する人気アナウンサー。

今回披露宴の司会をしていただくのは大きな蝶ネクタイがトレードマークのアナウンサーの先輩がしてくれるらしい。

「どうやって剛と知り合ったの?テレビ?」

「なんか亜依子の小学校時代の友人じゃったらしく、東京にワシらが上京した際に亜依子が再会したんじゃとよ」

「え?そうなの?聞いてなかったわ」

「アナウンサーと友達って知られて拓郎に会わせてとか言われたらたまらんからじゃろ。めっちゃ美人な人じゃし」

結婚式会場に着きウェルカムボードに貼られた二人の幼い頃からの写真を眺めていた。

「え!二人の初めての写真は中学の卒業式なんだね」

「二人共照れた表情でかわええのぅ」

「高校の体育祭のリレーの写真もある」

眺めていると誰か有名人が来たのか少しだけ周囲から声が上がった。

亜依子達が来た。

やっぱり人気バンドのボーカルは参列者からしたら興奮するみたいだ。

「久しぶりー!」

和寿、三宅さん、吉田さんと久しぶりに会った。

「拓郎!会いたかったよー!」

和寿は僕をぎゅっと抱き寄せ熱い抱擁をしてきた。
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