純恋歌
しばらく喋らないで居ると数分間亜依子は上の方を見つめ、難しい顔をしたり、喜んだ顔をしたり、また難しい顔をしたりと繰り返していた。

「え?もしかしてあなたは私と塾一緒だった?」

「あなたって」

笑いながら頷いた。

「じゃあ、雪景色の時の風光明媚も学校帰りの風光明媚も一緒のあなたなの!?」

目は涙が溜まっていて足をバタバタさせて興奮していた。

「やばい!ヤバすぎる!あの時私を助けてくれた電車の王子様が拓郎だったなんて」

「王子様って表現、おおげさ」

僕はその姿を見てクスクス笑った。

「なんなん拓郎の初恋って私だったん!めっちゃ嬉しいんだけど」

「高校3年生で同じクラスになって再会した時に似てるけど、名字違うから勘違いかなと思ったけど、顔や仕草や喋り方で勘違いじゃないって気づいた瞬間めっちゃ嬉しかったんだ。けど亜依子は全然気づいてくれんかったね」

「もっとちょうだい!私への惚気話しもっとちょうだい!」

そう言ってきたが先程こっちを見てた女子高生2人が亜依子の顔を覗くように見ていたので教えてあげた。

「ほらファンサービスしなきゃ」

電車を降りた女の子達が

「きゃー!本物!?」

喜びはしゃいでたので亜依子は手を振って応えた。

それからしばらくし終点に着き電車を降りたら祖父母が待っていた。

僕はゆっくり歩いて行き紹介した。

「今度僕と結婚します、亜依子さんです」

「遠い所よう来たね、えらいべっぴんさん連れて来たのぅ!」

「昔たく君と来た事覚えとるよ。また会えて嬉しいわ」

おばあちゃんは出会って10秒で亜依子の手を握った。 
< 227 / 231 >

この作品をシェア

pagetop