そのラインを越えて
「あ、蒼生くん!」
思わずかけ寄る。
蒼生くんは目を丸くして、
「えっ?えっ?」
と、私を見つめた。
「蒼生くんでしょ?私のこと、覚えてる?」
蒼生くんは私から目をそらして、
「えっと……、あの、はい……」
と、言った。
その返事で。
私には分かった。
(なんか、警戒されてない?)
蒼生くんって、私のこと……。
……怖がってない?
ひるみそう。
何、この温度差。
私は会いたくて仕方なかったのに。
(ううん、ここで負けたらオンナがすたるぜ!)
「私!N高2年の田中心愛!これからよろしく!!」
蒼生くんは困った表情になる。
でも、相変わらず私のほうを見ない。
「蒼生くんは?何年生?」
私の問いかけに蒼生くんは小さな声で、
「……に、2年です」
と、答えた。
「なんだ、タメじゃん!」
「はい……」
やっぱり目も合わせてくれない。