そのラインを越えて
「ネコ、苦手なんですか?」
初めて蒼生くんと目が合った気がした。
「苦手っていうか、アレルギーなんだよね!へっぶし!」
白ネコは私から離れない。
くしゃみも止まらない。
「ちょっと待ってください」
蒼生くんはそぉっと白ネコに手を伸ばして抱き上げ、私から離した。
「ほら、あっちに行っておいでー」
優しい小声で話しかけながら、私に背を向けて、白ネコを自由にしてあげている。
白ネコは駅のロータリーから、隣の公園に続いている植え込みの中に消えて行った。
それを蒼生くんはじっと見守るように見ている。
その後ろ姿を見て。
頬が熱を持っていくことが分かった。
(また助けてくれた……)