そのラインを越えて
引かれた線
翌日。
空き教室に侵入して、机を並べて座って。
私とゆっこは昼ごはんの菓子パンをかじっている。
菓子パンは登校途中のコンビニで買ったもの。
「で?」
ゆっこがチョコレートが入ったパンを食べ終わったタイミングで口を開く。
「恩人とは結局会えたの?」
私はわざとぶっきらぼうに、
「うん、会えたよ?」
と、言った。
ただの照れ隠し。
「どうだった?恩人に会って」
「超いい人だよ。……だけどさぁ〜」
「何?」
私は口の中のメロンパンを飲み込み、空になった袋を手の中でぐしゃぐしゃに丸めた。
「私との間に見えない線を引いてるっつーか、関わろうとしてこないっつーか、目ェ合わせてもくンないし、笑ってもくれないんだ」
「何それ」
ゆっこが笑った。
「心愛、あんた、怖がられてるんじゃん?」
怖がられてる。
確かに、私もそう思った。
「うーん、多分……」