そのラインを越えて

N駅から続く大通り。

その歩道の端にある郵便ポストの前でしゃがみ込んじゃった。



(歩かなきゃ)



でも立ち上がることができない。

道行く人達の視線を感じながら、私は自分の体をさすり、ズキズキする頭痛に耐える。

ここが家だったらいいのに。

自分のベッドに入って、早く休みたい。






バタバタバタ、と大きな足音が聞こえた。

何だよ、うるさいな。

頭に響くんですけど。

……なんて、思っていたら。



「あの、こっちです」



足音は私に近づいてきて。

思わず顔を上げる。

K高校の制服を着た男の子が、誰かを手招きしていた。



「あっ、本当だ!うちの生徒です」



聞き覚えのある声。

低くて、ちょっとかすれた声。



(この声は……)



「……田中?田中じゃないか!?おい、大丈夫か!?」



N高校で鬼より怖いと恐れられている、生徒指導の安西(あんざい)先生だった。



「先生ぇ?なんで?」


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