そのラインを越えて
鏡の中の私は、いつもの私とは違って。
アイメイクも薄いし、全体的に大人しめ。
髪型だって、ポニーテールにして、リボンをつけている。
「私じゃない」
ひとつも自分の「好き」が入っていない私を、蒼生くんが好きになってくれるのかな。
自信も何もない私といて、蒼生くんは楽しんでくれる?
この恰好をして、もしも好きになってもらったとしても。
「私は納得できない」
時計を見た。
まだ待ち合わせには充分に時間はある。
私は鏡の中の自分を見つめた。
キリリッとした表情。
本当の私を見た気がした。