そのラインを越えて
(来てくれたんだ!)
強引に約束させたのに、蒼生くんは来てくれたんだ……!
(嬉しい……!)
ってか、蒼生くんの私服姿!
私は少しの間、蒼生くんに見とれてしまった。
だって。
なんか、カッコイイんだもん……。
細かい千鳥柄のチェスターコート。
黒からグレイのグラデーションがキレイな、ビッグシルエットのニット。
細身の黒いパンツに、紫色のスニーカーを合わせている。
(ドキドキしてきた……)
「田中さん、あの、今日って……?」
蒼生くんの困惑した声に、私は我に返る。
「あ、今日は遊びたかったの、蒼生くんと!一緒に楽しく1日を過ごそうよ」
「あ……、はい……」
蒼生くんは困ったような表情を見せた。
そのことでまた、私の心はひるみそうになる。
でも。
(悩むなんてもったいない!)
蒼生くんといる今を楽しまなくてどうする!