そのラインを越えて
蒼生くんは目を丸くして、
「あの、じゃあ、やめておきましょうか……?」
と、少しだけ慌てている。
「……?なんで?」
何をそんなに慌てているんだろう?
「蒼生くんのオススメの本とかないの?」
私は構わず、大型書店に入って行った。
蒼生くんが後ろからついてこないから、振り返ってみたら。
蒼生くんは入り口の前で、ポカンとした表情で私を見ていた。
(あれ?)
その表情からは、さっきまで確かにあった警戒の色が消えているような気がした。
店内に入ってきた蒼生くん。
私はあることに気づいて、蒼生くんに両手を合わせる。
「ねぇ、オススメの本ってさー、できればマンガの本でオススメしてくんない?私、活字が本っ当に苦手なんだ!全部読む自信が持てないんだー」
「小説、苦手なんですか?」
蒼生くんの問いかけに、私は両手を腰に当てて、胸を張って答えた。