そのラインを越えて
なんでここにいるんだろう?
(もしかして、私、怒られる?)
頭の中がぼんやりして、うまく考えられない。
「うちの高校の生徒が具合悪そうにしているって、学校に連絡があってな」
安西先生は私からK高校の制服姿の男の子に視線を移した。
男の子は、
「あの、じゃあ、オレはここで」
と、軽くお辞儀する。
安西先生も頭を下げて、
「連絡をありがとうございました」
と、言った。
(ちょ、ちょっと待って)
私は慌てて立ち上がる。
そのせいでクラクラとめまいがした。
それでも一歩、男の子に近づく。
ほんの一瞬。
私が伸ばした手に気づいた男の子は、ビクッとした。
腕を少し上げて、目を丸くして。
「な、何か?」
え?
何ビクついてんの?
私、なんかしたっけ?
男の子は私と目を合わさないようにうつむきながら、
「あの、早く病院に行ったほうが……」
と、呟いた。