そのラインを越えて
「2行読むだけで爆睡できるかンね!」
「えっ……」
「本当だよ?秒で寝れるから!」
蒼生くんが、「ふふっ」と吹き出した。
それから声を上げて、
「あははははははっ!」
と、楽しそうに笑った。
(あれ、もしかして……)
私の前で初めて笑ってくれた……?
「それ、自慢気に言いますか?田中さんって面白い……っ」
笑っている蒼生くんの顔は、まるで少年みたい。
(可愛い……!)
私も自然と笑顔になってくる。
(嬉しい!)
私が。
蒼生くんを笑顔にさせたんだ。
こんな私が。
こんな顔にさせてるんだ。
嬉しくて、一緒になって声を出して笑った。
目頭が熱くなって、涙が出そうになる。
笑っているからなのか、嬉しいからなのか。
私には分からなかったけれど。
アイメイクが滲んでしまわないように、私は涙をサッと指で拾った。