そのラインを越えて


少年と目線を合わせるために、私は中腰になった。

少年は泣きじゃくりながら、
「ぼ、僕じゃなくて……!」
と、訴える。



「?」



「……ね、猫がっ、猫が死んじゃうーーーっ!」



そう言った少年は私の腕を掴んで、
「動物のお医者さんに電話してーーーっ!」
と、大きな声を出した。



蒼生くんは、
「田中さん、あとはオレが」
と気遣ってくれる。

多分、私が猫アレルギーだって覚えててくれたみたい。

だけど私は、
「蒼生くん、日曜日でも診察してくれる近所の動物病院を検索して!」
と言って、少年の顔をのぞき込んだ。



助けなくちゃ!



そう思った。



「あんたの猫は今、どこ?どういう状態なのか言って!」



少年は泣きじゃくっているから、答えない。



「泣くなーーーッ!!」



私は大声を出した。

目の前の少年は目を丸くしている。

でも、少年よりも蒼生くんのほうが驚いて、スマートフォンを落としそうになっていた。


< 33 / 41 >

この作品をシェア

pagetop