そのラインを越えて
少年と目線を合わせるために、私は中腰になった。
少年は泣きじゃくりながら、
「ぼ、僕じゃなくて……!」
と、訴える。
「?」
「……ね、猫がっ、猫が死んじゃうーーーっ!」
そう言った少年は私の腕を掴んで、
「動物のお医者さんに電話してーーーっ!」
と、大きな声を出した。
蒼生くんは、
「田中さん、あとはオレが」
と気遣ってくれる。
多分、私が猫アレルギーだって覚えててくれたみたい。
だけど私は、
「蒼生くん、日曜日でも診察してくれる近所の動物病院を検索して!」
と言って、少年の顔をのぞき込んだ。
助けなくちゃ!
そう思った。
「あんたの猫は今、どこ?どういう状態なのか言って!」
少年は泣きじゃくっているから、答えない。
「泣くなーーーッ!!」
私は大声を出した。
目の前の少年は目を丸くしている。
でも、少年よりも蒼生くんのほうが驚いて、スマートフォンを落としそうになっていた。