そのラインを越えて

「泣くヒマがあったら、ちゃんと話しな!みんなで猫を助けンの!!」



その時、蒼生くんがじっと私を見ている気がした。

でも、今は。

目の前の少年と、少年の猫のことを助けなくちゃ。



「公園の、すみっこの……」



少年はこぶしで涙をぐいぐい拭きながら話し始めた。



「公園のすみっこの段ボールの中で、猫が苦しそうにえづいてる……」






幸いなことに、近くの動物病院が日曜日でも診察していた。

蒼生くんが電話をして事情を話すと、診察してくれることになった。

病院まで慎重に、でも急いで、私達は猫を運ぶ。

ぐったりした猫に、
「頑張って!」
と声をかけたら、少年も蒼生くんも、
「頑張れ!」
と、一生懸命に声をかけていた。

くしゃみが止まらなくても、とにかく必死だった。





病院の待合室。

受付の女性スタッフ以外は、他の人はいない。

私はくしゃみが止まらない。

猫を診てくれた先生が待合室まで来てくれた。

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