そのラインを越えて
「大丈夫、心配ないですよ。お腹の中に毛づくろいの時の毛がたまって、それがうまく吐けなかったみたいですね。もう安心してくださいね」
私は少年の顔を見る。
すごくホッとして、安心した表情だった。
(大事な友達なんだなぁ)
「良かったじゃん!」
と、少年の手を握ると、少年は力強く頷いた。
「……へっぶし!!」
私のくしゃみが待合室に響いた。
少年のお母さんがやって来た。
待っている間に、蒼生くんが連絡したほうがいいよと言って、スマートフォンを貸してあげていたっけ。
少年はどうやらずっと公園で、こっそりとこのノラネコの世話をしていたみたい。
「家に連れて帰ってもいいでしょ?」
お母さんに少年は両手を合わせた。
お母さんは、公園でこっそりとノラネコの世話をしていたことを怒っていたけれど、最後は少年の真剣な眼差しに折れたみたい。
「きちんとお世話するのよ」
そう言って、少年の頭を撫でた。