そのラインを越えて
少年は私達に振り返り、満面の笑みを浮かべながらダブルピースのポーズをとった。
私もピースサインを返す。
蒼生くんはニコニコと少年を見ている。
「ほら、蒼生くんも!」
そう言うと、おずおずと蒼生くんはピースサインを少年に向けた。
「ありがとうございましたー!」
あんなに泣いていた少年も、今はまぶしいくらいの笑顔を見せてくれている。
少年に抱っこされた猫もゴロゴロとのどを鳴らして、安心しているみたい。
お母さんの車に乗って、少年と猫は家へと帰って行った。
「良いお兄ちゃんになるね」
車を見送ったあと、私は蒼生くんに言った。
「そうですね。でも、もう良いお兄ちゃんになってるのかもしれないですね」
「そうだね、あの子、頑張って守ろうとしてたもんね。あの猫のこと」
「はい」