そのラインを越えて

ボーッとしている頭の中だけど、これだけは聞いておかないと、と思って、
「名前、何?」
と、私は男の子を見つめた。



(助けてくれた人の名前、覚えておかないと)



男の子の目が泳ぐ。



「いや、あの、それより病院へ……」



完全に困った表情になった男の子を見て安西先生は、
「田中、保護者の方に連絡はしてあるから、とにかく病院へ行こう」
と、私に言った。



「名前、何ていうの?」



もう1度同じ質問を繰り返す。

頭痛が激しくなってきた。

イライラしてくる。

男の子が質問に答えず明らかに渋っている様子を見せたことに、ますますイライラした。



「早く病院へ……」



男の子が言い終わらないうちに、私の右手は男の子の胸ぐらを掴んでいた。



「だからっ!!名前何だって聞いてンだよッ!!!」



ほとんど怒鳴ってる。

熱のせいもあるかな。

こんなに短気になった理由は。


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