そのラインを越えて
「……私は、蒼生くんのことが好きだよ」
ふんわり舞ったみたいに、私の気持ちが言葉になった。
「好きだよ。蒼生くんの恋人になりたい。もっと蒼生くんに近づきたいんだ」
蒼生くんの頬がかぁっと赤くなっていく。
自分の頬の熱を自覚して、その熱を隠すように、蒼生くんは右手を顔の前にかざした。
「……!!」
(こんな時まで可愛いなんて、ズルい!)
胸の奥がきゅんとする。
「あの、オ、オレ……!」
蒼生くんは耳まで真っ赤に染めている。
「田中さんのこと、もっと知りたいです。だ、だから、これからも会ってほしいです」
「……えっ、それって……?」
蒼生くんは右手をおろして、真っ赤な顔を見せた。
「あの、今はそれで、ダメですか?」
……可愛い。
真面目で優しい蒼生くんらしい、誠実な返事だと思った。
「いいに決まってんじゃん!」
私の顔も真っ赤になってる。
ふたり、真っ赤な顔をお揃いにして。
ふふっと笑った。