そのラインを越えて

「あ、蒼生直樹(あおいなおき)、です……ッ!」



蒼生くんは青ざめながら、小声で名乗った。



(蒼生直樹、蒼生直樹……、ちゃんと覚えなくちゃ)



「こら!田中!!恩人に向かって何をやっているんだ!!その手を離しなさーーーい!!」



安西先生に怒られても、今日は全然怖くない。

ボーッとしているからかな?

安西先生は蒼生くんに謝りながら、私の手をどける。



その時。

足の力がなくなったみたいに、地面にペタンと座り込んでしまった。



「大丈夫ですか!?」



蒼生くんが私の顔を覗き込む。



(あれ?)



ようやく目が合った蒼生くんを見つめて。

ボーッとした頭の中で思った。



(……この人、イケメンじゃん)



さっきはビクッとなったくせに。

蒼生くんは私が倒れ込まないように、肩の辺りを両手でおさえて支えてくれている。



なんか、変なの。



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