そのラインを越えて

私の頬が熱を持っていくのは。

高熱のせいだけじゃないかも?



(優しいじゃん、蒼生くん)



ずっとこのままでいいかも、なんて思っていたら。

安西先生が蒼生くんに代わって支えてくれて。

私はすぐさま近くの内科に運ばれた。

意識が遠のく中、蒼生くんの姿を探したけれど。

結局見つけられなかった。



「先生、蒼生くんは?」



内科の待合室で。

ママと話している安西先生に聞いてみた。



「ここに来る前に帰ってもらったぞ」



……ふーん、そっか。

残念だなぁ。



(もっと話したかったな)



お礼も言えなかったなぁ、と私は目を閉じた。

病院の廊下で。

自分の中に芽生えた感情の気配を感じながら。

私は診察を待っていた。






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