そのラインを越えて

温度差


ごはんが美味しい。

体も軽いし。

寒くもない。



(……回復したな)



我が家の狭い洗面所で、ひとりニヤニヤ笑う。

健康って。

こんなに大事で、ありがたいことなんだなぁ。

しみじみ考えている。



「何、ひとりで笑ってるとか、まだ熱あるんじゃん?」



洗面所の入り口。

3つ年下の妹の乃愛(のあ)が、顔を引きつらせて私を見ている。



「うるさいなぁ〜。ほら、鏡、お先に」



私は洗面所を出て、通学鞄を持つ。



「行ってきまーす」



家を出たら、暖かい日差しにふんわりと包まれた。

風も強くないし、セットした髪もバサバサにならずに済みそう。






電車に乗って。

N駅で下りた。

大通りを歩く。

ここで助けてもらったんだな、ってしみじみ思う。



大通りをずっと真っ直ぐ歩いて、最後の交差点を左に曲がると、N高校に着く。

校門で安西先生が立って挨拶をしていたから、慌てて両耳のピアスを外した。


< 7 / 41 >

この作品をシェア

pagetop