そのラインを越えて
温度差
ごはんが美味しい。
体も軽いし。
寒くもない。
(……回復したな)
我が家の狭い洗面所で、ひとりニヤニヤ笑う。
健康って。
こんなに大事で、ありがたいことなんだなぁ。
しみじみ考えている。
「何、ひとりで笑ってるとか、まだ熱あるんじゃん?」
洗面所の入り口。
3つ年下の妹の乃愛が、顔を引きつらせて私を見ている。
「うるさいなぁ〜。ほら、鏡、お先に」
私は洗面所を出て、通学鞄を持つ。
「行ってきまーす」
家を出たら、暖かい日差しにふんわりと包まれた。
風も強くないし、セットした髪もバサバサにならずに済みそう。
電車に乗って。
N駅で下りた。
大通りを歩く。
ここで助けてもらったんだな、ってしみじみ思う。
大通りをずっと真っ直ぐ歩いて、最後の交差点を左に曲がると、N高校に着く。
校門で安西先生が立って挨拶をしていたから、慌てて両耳のピアスを外した。