そのラインを越えて
「おっ、田中!もう大丈夫なのか?」
私を見つけて、安西先生が声をかけてきた。
「昨日は学校休んでずっと寝てたよ。ヒマだった〜。だから、もう平気です。先生、ありがとうね」
「そうか、そうか。良かったな」
安西先生に軽くお辞儀してから、私は教室に向かった。
2年D組。
カラカラッと扉を開ける。
「あー!心愛!!」
大きな声を出して私に近づいてきたのは、ゆっこだった。
「もう大丈夫?アンタが風邪引くとかねー、驚きだよねー。マジでバカは風邪引かないって思ってたのにねー」
「……ゆっこ、心配してンの?けなしてンの?」
「えー、両方?かな?ってか、昨日心愛が来なかったからさー、ヒマだったっつーの。マジ体調崩すとかやめて。心配とヒマで、忙しかったし」
「……?何言ってんのか分かンないけど、とりあえず気をつけるわ」
よく分からない会話をしたあと、ゆっこが私に「あげる」と、のど飴をくれた。