勇者からのプロポーズはお断りいたします。
☆☆☆

 そして穏やかなある日の午後。掃除も洗濯も終わり、ユリアナは魔王城の裏にある小高い丘の一本の大木の下に来ていた。ここから魔王城が見渡せる。

 勇者と来たときは暗くて恐ろしかったこの辺り。あのときは、大木の上に闇が広がっていて、雷鳴が轟いていたものだ。
 今では、明るい太陽の日差しが大木の影を作りながらも、その葉の隙間を狙って光を地面に届けている。

 フライムートの書棚から一冊、本を借りてきた。大木の幹によりかかって両足を投げ出して座り、腿の上では猫の姿のヤンが身体を丸めて眠っている。

 こんな穏やかな時間が持てるようになるとは、あのときは思ってもいなかった。だけど、あれもこの時間を持つための過程に過ぎなかったのではないか、と思うことにした。

 過去に経験したことは全て今、そして未来に繋がっている。

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