勇者からのプロポーズはお断りいたします。
「勇者クリスが結婚したらしい」

「そうなの? よかったわね」
 さほど興味が無いという雰囲気を醸し出して、ユリアナは答えた。

「聖女ユリアナは行方不明のままらしい」

「そう。私はここにいるのにね」

「そうだな。ここは少し、あちらとは違うからな」
 そう言って、フライムートはユリアナの目を見つめる。「戻るのか? あちらに」

「どうして?」
 聞き返す。

「勇者と結婚したくなかったのだろう? 勇者が結婚した今なら、あちらに戻れるのではないか?」

「あら、あなたは私が邪魔なのかしら?」ユリアナが首を傾けて尋ねた。
 いや、そういうわけでは、と小さな声で言い訳を始めるフライムート。それが聞こえたのか聞こえていないのか、ユリアナは続ける。

「でもね、私。ここが気に入ってしまったの。あなたがいる、この場所が。死ぬまでここにいたい、って言ったらダメかしら?」

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