勇者からのプロポーズはお断りいたします。
 その言葉を聞き、フライムートは満面の笑みを浮かべた。この笑顔を見たら、使用人一同、大喜びすることに間違いないだろう。

「ただ、いる、というだけでは困るな」
 言い、フライムートは、一度視線を反らした。

「私と結婚してくれるなら、死ぬまでここにおいてやってもいいぞ」
 そこで彼はもう一度ユリアナの顔を見る。そして、
「それができないなら、とっとと……」

 戻れ、とフライムートは言いたかった。
 だが、その口を何かで塞がれてしまったので、残念ながら続きを言うことはできなかった。

 それはとても穏やかな風が吹く日の午後の出来事であった
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