ビター彼氏を甘くさせたい。
飛びついたわたしに、果緒くんは少しの間フリーズしていたけれど、ぎこちなくも腕を回してくれた。すき。
もっと近くで顔を見たくて、ひょこっと目を合わせてみる。
そこには、うんと整ったお顔があって。
数秒、見つめあってスローモーションのように顔が近づいた。
……と、ストーーーップ!!
「果緒くんっ!」
「……うわ、ムード台無し、さいあく」
突然、ストップをかけたわたしに、果緒くんは嫌そうに顔をしかめた。
まだ、いじわるしたい。
果緒くんの、愛を感じたいよ。
眉間にしわを寄せた彼と、近い距離のまま、話す。
「……果緒くんと、キスしたいです」
半年間、付き合ってても、指で数えることができるほどしかキスはしなかった。
それも、想いが通じあってるのか自信がないまま。
えへへ、と上目遣いで見つめると、果緒くんは無表情のまま、だけど困ったように言う。
「言わなくても、……するつもりだったし。あゆのばか」
ばかじゃ、ないもん。
その言葉は、彼の唇に遮られて出てこなかった。