ビター彼氏を甘くさせたい。
いつかのバレンタインの日みたいに、怒って立ち上がるわたしに、あのときとはちがう声で、果緒くんは引き止める。
「───あゆ、」
彼にうんと弱いわたしは、すぐに振り向いてしまう。
さっきまで食べていたチョコレートと、彼とのキスの作用で見事に脳内が甘ったるい。
そんな彼は、嫌いじゃない。
むしろ、苦いからこそ甘さが映える。つまりだいすき。
「……今日は、あゆのこと甘やかす、から。おいで」
ビター彼氏の糖度の高さに、失神しそうになったのは……いうまでもない。