ビター彼氏を甘くさせたい。
『あゆ情報とかあほみたい』ってばかにされた。
ふだん、名前すらあまり呼んでもらえないから、たったその“あゆ”の2文字だけで鼓動がはやくなる。
我ながら、果緒くんのことになるとピュアだ。
「果緒くんはね、冷たくて辛辣、苦さが多いの。
でも、ごくたーまに甘えてくるから糖度7パーセント彼氏だよ」
「カカオ70パーセントチョコレートみたいに言うな」
ちょうど、机の上にある、わたしが食べてたそれを指さして言う果緒くん。
言ってることはあんまり笑えない。だけど、わたしの愛用しているクッションを抱きしめている彼をちろっと睨む。
「ちえっ、チョコレートのほうが甘いよ……。
バレンタインですら、『チョコ嫌い』のひとことで切った果緒くんだもん……」