ビター彼氏を甘くさせたい。
渾身の力作のどでかいチョコケーキを、ハート型に焼いて彼に渡したバレンタインデー。
さすがにあれは大きすぎたかな、ぜったいひとりで食べれないよね、っていまは反省してる。
でも、果緒くんはバレンタインの日、それをちらりと見た瞬間、マフラーに顔をうずめて辛辣に言い放ったのだ。
『おれ、チョコ嫌い』
『……?!?! まて、果緒くん!? それは聞いてないよっ? なんでもっとはやく言ってくれないの!』
『わざわざバレンタイン前にチョコ嫌いって言うとか、ふつうに、なんか恥ずい』
『行き場のない巨大ケーキを持ってるわたしのほうが恥ずかしいよ!?
果緒くんのばかやろー!』
泣いて叫んで、ベーーーっ!と舌を出して家に帰ろうとした。
それなのに、果緒くんは『まって』なんて、引き止めて。
『いらないとは、……言ってない』
ふてくされた表情で、ぶっきらぼうにわたしの手からそれをひったくったのだ。