君は冬の夜に咲いた【完】
私は、バカじゃない…。
もしかしたら、っていう考えが出来ないわけじゃない。


字を書くことが苦手な乙和くん。
そして、〝あの日〟、乙和くんは私が「消えたかと思った」と言ったり、得意な野球ボールをキャッチ出来なかったり、まるで空間認識がおかしくなっていた…。


頭はボールが直撃し、頭の検査をした乙和くん…。



そんな乙和くんが私に会いに来たのは、お昼休みだった。「ちょっといい?」と、その声は朝に聞いたような泣きそうなこえじゃなくて。


まるで私を拒絶したような声。


壁を作るようなその声に、喉がなった。


大好きな乙和くんが、私に本当の別れを告げようとしてる……。


人気のない廊下に私を連れてきた乙和くんは、眼鏡をかけたまま私を見つめてくる。

かっこいい乙和くんは、その眼鏡もよく似あっていた。
私を見下ろす彼は「…あの紙、迷惑だからやめて欲しい」と呟く。


2人きりの廊下では、乙和くんの声がよく響く。



「別れようって、言ったよな?」


久しぶりに、私に向けられる言葉が拒絶でも、こうして乙和くんに話しかれられるのが嬉しくて。


「もう関わらないでほしい」


嘘だって、分かってる。


「ノートもやめて」


分かってるけど、やっぱり辛い。


「あと勇心に、いろいろ聞くのもやめて」


泣きそうになる。


「俺が無理矢理、別れようって言ったのは悪いと思ってる。……でも、俺、そこまではるのこと好きじゃなかったから」


辛い。


「地味だし、眼鏡だし…可愛くないし」


きらい……。


「俺とは合わないと思ったから」


私は、乙和くんに信用されないほどだったのだろうか?
乙和くんはこのまま私を傷つけて、自分の体のことを言わないつもりなんだろうか?


「だから、別れてほしい」


私が、きっと、頼りないから。

私が頼りないから嘘をつかせているんだ。



ポロポロと泣き出す私を見て、乙和くんはどう思ってるのかな。


乙和くんは優しいから、〝こんな事言いたくない〟〝ごめん〟って、きっと思ってるんだろうなぁ…。
< 17 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop