君は冬の夜に咲いた【完】
狭川くんの言ってる〝そんな顔〟が見えないけど。
乙和くんが「無理なんだよ…」と、呟いたその声に、私は咄嗟に口元を抑えた。
今にも泣きそうで苦しそうな声は、別れたあの日と同じようなトーンだったから。
「…なにが無理?」
聞き出そうとする彼…。
「俺ははるを幸せにできない…」
「なんで」
「晃も分かってるだろ…」
「…体、悪いこと?…分かってるよ、それでも生きてるだろ」
「…」
「乙和」
「…」
視線を下げ、目元に手を置いた乙和くんに、「 頭か…?」と、不安げに呟いた。
「腫瘍とか、あるのか?腫瘍なら取れるだろ?」
「…」
「乙和…」
沈黙が流れた。
雰囲気が、暗く。
私が1呼吸でもすれば、私がいる事がバレそうなほど…深い沈黙だった。
「頭じゃない…死ぬ病気とか、そんなんじゃない」
「…だったら、なんで言えない…?死ぬ病気じゃないなら…」
耳を塞ぎたい。
塞いでしまいたい。
「……いずれ失明するんだってさ、この目」
乙和くんが、私と別れた理由…。
「5割ぐらいの遺伝で…、子供にうつるらしい」
子供が沢山欲しいと言っていた乙和…。
別れた日、あんなにも泣きながら、私の顔を目に焼き付けた理由は……。
〝もっと見せて〟
見えなくなってしまうから。
「……──ッ、…はるに言えるわけないだろ!!」
乙和くんが「無理なんだよ…」と、呟いたその声に、私は咄嗟に口元を抑えた。
今にも泣きそうで苦しそうな声は、別れたあの日と同じようなトーンだったから。
「…なにが無理?」
聞き出そうとする彼…。
「俺ははるを幸せにできない…」
「なんで」
「晃も分かってるだろ…」
「…体、悪いこと?…分かってるよ、それでも生きてるだろ」
「…」
「乙和」
「…」
視線を下げ、目元に手を置いた乙和くんに、「 頭か…?」と、不安げに呟いた。
「腫瘍とか、あるのか?腫瘍なら取れるだろ?」
「…」
「乙和…」
沈黙が流れた。
雰囲気が、暗く。
私が1呼吸でもすれば、私がいる事がバレそうなほど…深い沈黙だった。
「頭じゃない…死ぬ病気とか、そんなんじゃない」
「…だったら、なんで言えない…?死ぬ病気じゃないなら…」
耳を塞ぎたい。
塞いでしまいたい。
「……いずれ失明するんだってさ、この目」
乙和くんが、私と別れた理由…。
「5割ぐらいの遺伝で…、子供にうつるらしい」
子供が沢山欲しいと言っていた乙和…。
別れた日、あんなにも泣きながら、私の顔を目に焼き付けた理由は……。
〝もっと見せて〟
見えなくなってしまうから。
「……──ッ、…はるに言えるわけないだろ!!」