君は冬の夜に咲いた【完】
泣かせないと、言ったのに。
私の言葉に、じわじわと涙を浮かべる乙和くんは、私の顔を見続ける。


「大好きだよ…」


愛の言葉を呟けば、今度は強く、乙和くんが〝離さない〟とでもいうように、骨がなりそうな程抱きしめてきた。
それでも痛いとは思わなかった。
乙和くんの心の中はもっともっと…痛い…。


「ばか…」


私に悪口を言う彼だけど、そのトーンは優しかった。昔の乙和くんだった。


「乙和くんも、私を泣かせないで…」

「ばかだよ…」

「つぎに、別れたいって言ったら、ずっとずっと泣くからね」

「俺のとこに帰ってきても、泣く羽目になるよ」

「ならないよ…」

「なる…」

「だって乙和くんが大好きだから…」

「…っ、」

「大好きだよ……」

「…はる、」

「──…教えてくれてありがとう…」
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