君は冬の夜に咲いた【完】
乙和くんの目尻には、少しだけ涙が浮かんでいた。涙脆い乙和くんの涙も、7色に光る。


「はる…」

「うん」

「本当は、ずっと躊躇ってる……」


知ってるよ、
…乙和くんは、優しいから。


「俺のせいではるに苦労はかけたくない…」

「うん」

「はるが、もしかしたら影で泣くかも、って思うと…」

「うん」

「はるの親も、きっと反対する…」

「うん」

「俺のせいでって…」

「…うん、」

「はる」

「だけど、乙和くんは、もし見えない私が苦労かけても、私のことで泣いても、乙和くんの両親が反対しても、全部全部私のせいでも、そばにいてくれるでしょう?」


乙和くんの目から、透明な涙が流れていく。

乙和くんは何も喋らなかった。

ただ、静かに泣いていた。



「はる……」


優しい瞳が、私を見つめてくる。


「俺…、」


ゆっくり近づいてきた乙和くんは、私の額に、自身の額を当てた。


「見えなくなったら、…どこにいるか、分からないときも、…はるの名前呼んでいい…?」


涙声の乙和くんの声をきけば、私の方も、目の奥が熱くなった。


「…あたりまえだよ…」

「…いっぱい呼ぶよ?」

「いいよ、いっぱい呼んで…、呼ばれると嬉しい」

「ずっと探すよ…」

「そばにいるから、絶対に見つけられるよ…。探さないと許さないよ…」



涙腺がゆるみ、私も静かに涙を流せば、乙和くんの指が涙をふき、視界がクリアになった。


「はる…」

「うん」

「はる」


乙和くんの、大好きな乙和くんの顔がそっと、下へと向かう。
そのままゆっくりと、唇同士がふれあった。


「はる、」

「うん」

「はる」

「うん」

「はる…」


何度も何度も名前を呼ぶ乙和くん…


「いるよ、ここに。そばにいるよ…」


そう言って私からキスをしようと、顔を上げようとすれば、






「──……愛してる」


本当の愛の、愛の言葉を呟いた乙和くん…。



そんな彼を抱きしめれば、「ありがとう…」と、泣いているのに、嬉しい感情がこもってる呟きが耳に届いてきた。
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