君は冬の夜に咲いた【完】
「うん、小町はるちゃん」


私のフルネームを言った乙和くんに、また頬が赤くなっていく。それは眼鏡でも、隠せなさそうな勢いで。


「からかってるの…?」

「んーん、ほんき」

「乙和くん…」

「だめ?」


だめ、って言われても。


「だって、違いすぎない…?」

「違う?」

「見た目、とか…」


半分こした手の中のアイスが、だんだん溶けていく。


「見た目? ああ、染めよっか?髪」

「え?」


染める?何を?
私の髪を、乙和くんと合うように染めるということ?


「黒くしたら、告白していいの?」


黒くしたら?
黒く?
え?乙和くんの髪を染めるの?
それは、私に合わせるって言うことで。


「ち、違うよ。そういう意味じゃなくて。変えなくていいいよっ、その髪凄く似合ってる!乙和くん背も高いし、…ほんとにかっこいいから……変えなくても…」


私の言葉に、少し頬を染めた乙和くんは、「…それは、どうもありがとう…?」と、照れたように呟き。


「じゃあ、なんで見た目?」


彼はどうしてか、私ではなく、自分の見た目を気にしているようで。


「見た目は私の方だよ…。眼鏡だし…チビだし。可愛くないし…眼鏡だし」

「なんで眼鏡2回」

「釣り合ってないと思う…」

「俺とはるが?」

「うん…」


その刹那、乙和くんの手が伸びてきて。
アイスを持っていたからか、冷たい指先が私の頬にふれた。

カチ、と私の眼鏡の音が鳴る。
それは乙和くんの指によって外され。
そのせいで少しだけぼやけた乙和くんの顔が視界の中にうつってくる。


「普通に可愛い方じゃない? 」


か…。


「そのままでいいと思うけど…」


また、私の元へと戻ってくる眼鏡…。

レンズ越しで、乙和くんは私を見つめてくる。
きっと私の顔は、真っ赤だ。


「結構、真面目に好きだから、俺と付き合ってくれない?」


……そう言いながら頬を染めてる乙和くん。


「…告白、送ってからじゃなかったの?」

「うん、我慢できなくて」

「…地味だよ?」

「可愛い」

「…眼鏡…」

「はは、3回目?」

「ま、まって、ほんと、…いきなりすぎてなんて言えばいいか分からなくて…」


これは、夢?


「うん、か、よろしくお願いしますのどっちかでいいんじゃない?」


それは、どちらも乙和くんの告白を受け入れるってことでは?


「だめ?」


恥ずかしくて、言葉も出なくて。
やっとやっと出たと思えば、「わ…」と、やけに変な声が出て。


「わ?」

「わたし、」

「うん」

「わたしもすき……」


私の言葉に、嬉しそうな顔をした乙和くんは、すごく幸せにそうだった。

きっと乙和くんは本当にいい人なんだろう。優しくて、外見で判断しないような人。


「これでやっと勇心に、俺の彼女のだからノート見せれないって言えるわ」


もうとっくにアイスは溶けていた。




小町はる、高校3年生で初めての彼氏ができた。
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