ラストノートは滴る溺愛で
外に出るとちょうど日も傾き始め、今から飲むにはいい時間だ。

街路樹の桜の木は葉桜になり、寒さはだいぶ緩くなった。

「行きましょうか」

自然に腕を組み歩き出すと、


「あ、、、」


背後から零れるようなため息混じりの声がした。

顔を背けるように振り返った先にいたのは滝 ほのかだった。


「今帰りか?気を付けてな」

「あ、うん、、、」

「こちらは?」

組んでいた腕を緩め、隣の女も向きを変え、滝 ほのかと俺を交互に見る。

「あー、うちのお客さん。」

「そうなんですか。こんばんは、これから手嶌さんとワインのお店に行くの。良かったら、あなたもどうかしら?」

「あぁ、いえ。私は失礼します。」

「そう?では、行きましょう、手嶌さん。」

また並んで歩き出す。

―あいつ、大丈夫か、顔色悪かったような、、、―


< 5 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop