シークレット・ウェディング
「それ、着てみろよ」
「な、なんで……」


 それはシンプルなデザインの真っ白な──ウェディングドレス。


「二人だけの結婚式をすんだよ。いいから早く」


 遼が慌ただしげに近くの部屋にウェディングドレスと私を押し込む。


 当の私は嬉しさと幸福感で思考が停止。


 もはや無心で慣れないドレスと格闘していた。


「着た?」

「うん、着た!」


 しばらくしてやっとドレスのチャックを閉じ終わったところで、部屋のドアをゆっくりと開ける。


「うわ……可愛すぎ」

「……ありがと」

「おまえが俺に礼言うとか明日は雪かもな」

「私だってお礼くらい言うし!」

「まあ礼を言うのはまだ早いけどな」


 遼は素早く机の上にあった紙を掴み取り、私に「ほら」と差し出す。


 そこに書かれていたのは──〝内定書〟の文字。


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