太陽に魅せられて
「店長!今日のりんごパン美味しかった!」

今日も放課後にバイトに入るや否や

店長にもらった新作パンの感想を伝える。

「だろだろだろ〜自信作!
こっちの洋梨パンも上手いから食ってみ!」

店長は笑顔でパンを押し付けてくるから

言われるがまま食べる

「…え!これもおいしい!」

「だろ〜?作り方教えてやるから早く着替えてこい!」

「はーい!」


半年前くらいから店長に教えてもらってから

私もパンづくりに携わるようになった

店長に頼まれたら時々メニューも考えたりしている

だけどまあ私は所詮バイトだし

メニューを作ると言っても既存のもののアレンジばかり


「おいミホー!まだかー?もたもたしてると店閉まるぞー」

店長が大声でせかしてくるから

急いで着替えて店長の元へ向かう

「店長、せかしすぎです。
こんなコンビニレベルで長時間店開けてるんだから閉まるわけないじゃん」

「お?褒め言葉ですか?ありがとうございまーす」

「ほんと、体壊さないでくださいね」



ここのパン屋は朝6時から夜の12時まで空いている。

夜なんて人来ないんだから閉めたら?

って店長に聞いたことあるけど

店長曰く、明日の仕込みついでに開けてるだけだから問題ないらしい。

すごいよね、ほんと、いつ寝てるんだろうって思う。



それに夜は、
仕事で疲れ切ったお客さんの心を癒すパンになれるんだって

その心を癒すパンになれる瞬間は

パンがいっぱい売れた時よりも嬉しいものなんだって

店長は口癖のように言っている

私はまだ感じたことないからわかんないんだけど






パンのことになると店長はとても熱くなる

いつもはふざけてばっかりなのに

急に真剣な顔つきになってテキパキ仕事をこなすところも

苦労を乗り越えた後の達成感を味わっているところも

全てがかっこよく見える

私には夢中になれるものが何も無いから

いつかわたしにもああやって

夢中になれるものが見つかるのかなと

ぼやーっと思いながら

また平凡に過ごす日々の繰り返し
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