歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~

1.同じ年齢

瑛美(えみ)ちゃん、仕事の途中で悪いんだけど、昼メシ取りに行ってきてもらえる?」

「いいですよ。社長、今日いくつ頼みました?」

「えーとね、今日は全部で4つかな。お昼に、税理士事務所からのふたりを加えてランチミーティング予定」

「はーい、じゃ行ってきますね」

「頼むね!」


お財布を持って外に出ると、外は上着がいらないくらいの、ちょうど良い気温だった。
通りを渡った反対側においしい和食のお店があって、ここのランチが社長のお気に入りだ。

えーと、今日のテイクアウトは・・・わぁ、海鮮丼♡
こんにちはー、とお店のドアを開けると、ご主人と奥さんが揃って迎えてくれた。


「瑛美ちゃん、ランチ4つ用意してあるわよ。いま持ってくるから、少し待ってて」

「はい。いつもありがとうございます」

「瑛美ちゃん、今度、夜に(おさむ)とおいでよ。珍しい酒が入ったって、伝えておいて」

「わ~、楽しみにしてます」

「お待たせ。両手ふさがるけど大丈夫かな? 気を付けて帰ってね」

「はーい。じゃ」


修・・・というのは社長の名前で、ご主人と社長はプライベートでもとても仲がいい。
社長の食べ物の好みも当然よく知っていて、夜はおいしいお酒を出してくれる。


「あっ」


両手にランチの袋を下げていたから、腕でドアを開けようとした時に、脇に挟んでいたお財布が落ちてしまった。
拾おうとすると、横からスッと手が伸びてきて誰かが拾ってくれた。


「ドア・・・開けます」

「あ、ありがとうございます」


危ないと思ったのか、その男の子はドアを開けて、私が通り過ぎるまで閉まらないように抑えてくれた。
そう、男の子・・・に見えたのだ。大学生くらいの。


「あの、私のお財布・・・」

「あ、すみません・・・」


差し出した手と、受け取ろうとした手がぶつかり、男の子はとっさに手を引っ込めた。
思わず顔を見ると、手がぶつかっただけで赤くなっている。いまどき珍しいよね・・・。


「何?」

「あ、ごめんなさい、何でもない。お財布、拾ってくれてありがとう」

「あの・・・またドア開ける時、落とさないように気を付けて・・・」

「そう・・・だね。気を付けないと」

「じゃ・・・」


男の子はお店の中に入っていった。
あれ・・・あの子、どこかで見たような・・・。
テレビかな? ネット? オフィスに戻るまで考えてみたけれど、思い当たらなかった。気のせいかな・・・。


「原田さん!」

「中谷さん、こんにちは。そっか、お昼からのミーティングって中谷さんたちだったんですね」

「うん。原田さん、お使い? 荷物片方持ちますよ。ドア、開けられないから」

「ありがとうございます! そうなんです、さっきもお財布落としちゃって」


オフィスに入る直前で、税理士の中谷さんに声を掛けられた。
仕事で付き合いのある税理士事務所の方で、月に2回くらいミーティングで会っている。

多分、同じくらいの年代なんじゃないかな・・・。
仕事以外の話をほとんどしたことがないけれど、なんとなく、雰囲気でそんな気がしていた。

中谷さんて、結婚・・・してるのかしら?
< 1 / 33 >

この作品をシェア

pagetop