歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
「北原くん、何か苦手な食べ物ありますか?」
「あ、特に無いです」
「そう・・・お腹、けっこう空いてる?」
「そんなには」
「じゃあ、お蕎麦屋さんにしようか」
お店に入り、それぞれ注文した。
何か話した方がいい気もしたけれど、あれこれ聞くのもどうかと思って、お店のテレビから流れるニュースを見ていた。
「あの・・・原田さん」
「はい」
「僕、あんまり自分のこと話すの得意じゃなくて」
「うん」
「広瀬社長も原田さんも、興味本位で僕のこと聞いたりしないから、正直、助かりました」
サッカーのこと・・・かな。
何か、ケガが原因で嫌な思いでもしたのだろうか。
「何か・・・嫌なことでもあったの?」
「あったような無かったような・・・もう、忘れましたけど」
お蕎麦が運ばれてきて、午後からの業務の話をしながらランチを終えた。
オフィスに戻り15分ほど資料の説明をして、そこから先は北原くんにやってもらうことにした。
「何か分からないことがあれば、すぐ聞いてください」
「はい」
「単純作業だから、休憩しながらやっていいよ」
「はい」
「瑛美ちゃん、ちょっといい?」
「はーい。じゃ北原くん、よろしくお願いします」
社長が、珍しく応接室に私を呼んだ。
社長はオープンな性格だから、ここに呼ばれる時は深刻な話がある。
「何かあったんですか?」
「いや、実は北原くんのことなんだけど」
「はい」
「彼のこと、何か知ってる?」
「昨日、聖美さんに少し聞きました。サッカーやってて、プロ間近だったのに大ケガしたとか」
「そう、そのことなんだけどさ」
今は平気そうにしてるいるけれど、かなりの挫折だったらしく、一時はずっと部屋に引きこもっていたのだそうだ。
プロ間近ということは、当然周囲の期待度も高くて、ケガによる大人たちの豹変ぶりもずいぶんと彼を傷つけたようだった。
あいつはもうダメだろう・・・って。
「俺はサッカーのことはよく知らないけど、俺の友達に野球やってて似た境遇のヤツがいてさ。だいぶ辛そうだったよ」
「そうなんですか・・・」
「ま、そんなことがあったとはいえ、普通に接してやってよ。仕事は仕事、いつもどおりビシビシやってくれていいから」
「もー、いつもそんなことしてませんから!」
笑いながら、よろしく〜と社長は応接室を出て行った。
そんなにひどいケガだったんだ・・・。
さっき一緒にランチに行った時は、歩く姿に特に違和感は無かったし、もしかしたら相当リハビリを頑張ったのかもしれない。
いろいろあっての、今の北原くんなんだ。
「進み具合どう? 何か分からないところはある?」
「今のところ大丈夫です。100枚くらい・・・処理できたと思います」
「ほんと? 早いね。ちょっと画面見せてもらえる?」
パソコンの画面から内容を確認すると、間違いも無くきちんと処理されている。
「よく出来てる。これだと想定より早く終わりそう。ありがとう」
そう声を掛けると、北原くんは一瞬『え?』という表情をして、その後、嬉しそうに笑ってこう言った。
「誰かに『ありがとう』って言われるの、すっごい久しぶりです!!」
「あ、特に無いです」
「そう・・・お腹、けっこう空いてる?」
「そんなには」
「じゃあ、お蕎麦屋さんにしようか」
お店に入り、それぞれ注文した。
何か話した方がいい気もしたけれど、あれこれ聞くのもどうかと思って、お店のテレビから流れるニュースを見ていた。
「あの・・・原田さん」
「はい」
「僕、あんまり自分のこと話すの得意じゃなくて」
「うん」
「広瀬社長も原田さんも、興味本位で僕のこと聞いたりしないから、正直、助かりました」
サッカーのこと・・・かな。
何か、ケガが原因で嫌な思いでもしたのだろうか。
「何か・・・嫌なことでもあったの?」
「あったような無かったような・・・もう、忘れましたけど」
お蕎麦が運ばれてきて、午後からの業務の話をしながらランチを終えた。
オフィスに戻り15分ほど資料の説明をして、そこから先は北原くんにやってもらうことにした。
「何か分からないことがあれば、すぐ聞いてください」
「はい」
「単純作業だから、休憩しながらやっていいよ」
「はい」
「瑛美ちゃん、ちょっといい?」
「はーい。じゃ北原くん、よろしくお願いします」
社長が、珍しく応接室に私を呼んだ。
社長はオープンな性格だから、ここに呼ばれる時は深刻な話がある。
「何かあったんですか?」
「いや、実は北原くんのことなんだけど」
「はい」
「彼のこと、何か知ってる?」
「昨日、聖美さんに少し聞きました。サッカーやってて、プロ間近だったのに大ケガしたとか」
「そう、そのことなんだけどさ」
今は平気そうにしてるいるけれど、かなりの挫折だったらしく、一時はずっと部屋に引きこもっていたのだそうだ。
プロ間近ということは、当然周囲の期待度も高くて、ケガによる大人たちの豹変ぶりもずいぶんと彼を傷つけたようだった。
あいつはもうダメだろう・・・って。
「俺はサッカーのことはよく知らないけど、俺の友達に野球やってて似た境遇のヤツがいてさ。だいぶ辛そうだったよ」
「そうなんですか・・・」
「ま、そんなことがあったとはいえ、普通に接してやってよ。仕事は仕事、いつもどおりビシビシやってくれていいから」
「もー、いつもそんなことしてませんから!」
笑いながら、よろしく〜と社長は応接室を出て行った。
そんなにひどいケガだったんだ・・・。
さっき一緒にランチに行った時は、歩く姿に特に違和感は無かったし、もしかしたら相当リハビリを頑張ったのかもしれない。
いろいろあっての、今の北原くんなんだ。
「進み具合どう? 何か分からないところはある?」
「今のところ大丈夫です。100枚くらい・・・処理できたと思います」
「ほんと? 早いね。ちょっと画面見せてもらえる?」
パソコンの画面から内容を確認すると、間違いも無くきちんと処理されている。
「よく出来てる。これだと想定より早く終わりそう。ありがとう」
そう声を掛けると、北原くんは一瞬『え?』という表情をして、その後、嬉しそうに笑ってこう言った。
「誰かに『ありがとう』って言われるの、すっごい久しぶりです!!」