歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
勝手だな、私。

中谷さんをいいなって思ってたよね?
仕事してる横顔もいいなとか、もしかしたら意識してるなんて思ったりもしたよね?

お互いの仕事に理解もあるし、付き合ってマイナスになることなんて、無いんだろうと思う。

でも、上手くいかなくなったら?
別れることになって、気まずくなっても仕事はできる?
そこはお互いプロだから割り切れるもの?

・・・中谷さんに返事をするために、どうしてこんなに言い訳が必要なんだろうか。

考えれば考えるほど、答えに辿り着かない。
そう、考えれば考えるほど・・・だ。


「恋してないのよ、それは」

「恋・・・ですか?」

「なんていうの、ほら、キュンとする感じ?」


聖美さんに話すと、あっさりそう言われた。
心は正直なのよ、と。


「でも、いいなと思う人と付き合ってみるのもアリなのよ。そこから恋愛に発展することだってあるわけだし。コンカツとかお見合いなんて、まさにそんな感じじゃない?」

「まぁ、そうですけど」

「とはいえ、今の瑛美ちゃんには無理ね。瑛美ちゃんマジメだから、試しに付き合ってみるとかできないでしょ?」

「それは・・・」

「返事は急がなくていいって言われたのに、どう返事するか、もう考えてるでしょ?」

「・・・はい」

「引っ掛かるところがあるのに、付き合うのはどうかって思ってるでしょ?」

「うっ・・・」


図星過ぎて、反論の余地も無い。
そう、考えれば考えるほど、中谷さんを傷つけないように・・・とか、オトナとしてどうするべきか・・・というところに思考が働いてしまう。


「キュンとする人に巡り会うまで待てばいいのよ。もしかしたら、それは中谷さんになるかもしれないし、他の人かもしれないし」

「キュンとする人ですか・・・」

「そうよ」


とにかく急がないことね、と聖美さんに念押しされた。


最後に誰かと付き合ったのっていつだっけ・・・。
その時は、どうやって始まって、どんなことがあって、どうやって別れたんだっけ・・・。

かなり前のことで、思い出すのに時間がかかった。

そういえばあの時は、歳上の彼の顔色を伺って、結構頑張ったのにフラれたんだった。
好きだって告白されて付き合い始めて、それからどんどん彼のことが好きになって、よく思われたくて無理し始めて・・・。

思い出していたら、だんだん苦しくなってきた。

私、あの頃から何も変わっていない。
誰かのためにすることが、どんどん『自分』からずれていくことなのだとしたら、それは自分のためになるどころか、やっぱり苦しくなるだけだ。

だとしたら、私はどうすればいい?
私は、どうしたい?

今はまだ・・・中谷さんとは、仕事仲間でいたいと思う。
どうして?

それは・・・仕事以外のところで、一緒にいたいとまだ感じていないから。
聖美さんの言葉を借りれば、キュンとしないから・・・だろうか。

これでいいのかな・・・。

他の誰かに伝えるかは別として、迷いつつも、誰のためでもない、自分のための答えが出せたことに、少しホッとした。
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