歳の差 ~15歳年下男子は、恋愛対象ですか?~
「瑛美ちゃん、午後に柴田所長と中谷くんが来るから、準備しといて。今日は、前から言ってた年金のところだから」

「はい、14時でしたよね。資料まとめてあるので、社長、後で確認お願いできますか?」

「もちろん」


付き合ってほしいと言われてから、面と向かって中谷さんに会うのは初めてだった。

連絡先を交換したとはいえ、頻繁にメッセージのやり取りをするような仲でもなく、中谷さんから返事を求められることも無かった。


「社長、資料です」

「いま一緒に確認しよう。あまり時間無いから、内容の説明してくれる?」

「はい。まず1枚目ですが・・・」


一通り説明が終わり、社長のデスクを離れたところで北原くんと目が合った。

何か話がありそうな雰囲気だったけれど、私は資料の修正があったし、北原くんは社長に連れられてランチに出掛けた。


「あーーー、間に合った〜」


修正が終わり、印刷も済んだのが13時半だった。
お昼は食べ損ねたけれど、準備が間に合って良かった。


「原田さん、これ良かったらどうぞ」

「ん?」


ランチから戻ってきた北原くんが、通りのカフェの紙袋を差し出した。
袋の中を見てみると、コーヒーとパンが入っていた。


「えー、どうして?」

「社長が、原田さんが昼抜きだって言ってたんで、お腹空くかなと思って」

「ありがとう、嬉しい!」

「・・・」


北原くんの顔が、初めて会った日と同じように赤くなった。
それを見ていた私も、何だか恥ずかしくなった。


「こんにちは、原田さん」


後ろから、中谷さんに声を掛けられた。
しまった・・・もしかして、いまの北原くんとの会話、聞かれてたかな。


「中谷さん、いついらしたんですか? 早かったですね」

「少し前に着いて、広瀬社長と雑談を」

「そうだったんですね」


聞いてはいなかったとしても、絶対こっち見てたよね。
あぁ、何だか気まずい・・・。


「彼が北原くん?」

「あ、そうです。私の仕事を手伝ってもらってて」

「そうなんだ。初めまして、税理士の中谷です」

「北原 颯太です。よろしくお願いします」

「あれ、キタハラ ソウタ・・・どこかで聞いたことがある気がするな」

「・・・」

「さ、中谷さん、会議室へ。資料、準備できてますので」


ふたりを引き離すように、中谷さんを会議室に誘導した。
中谷さん、もしかしてサッカーに詳しいのかしら・・・。

北原くんにもらったコーヒーを片手に、私も会議室に入った。


打ち合わせが終わり、会議室から出てきた中谷さんが北原くんのデスクに向かった。


「北原くんて、サッカーやってたよね?」


社長と私はその言葉に反応して、中谷さんと北原くんを見た。


「どうしてここでアルバイトを?」

「・・・」


社長が、会話を止めに入ろうとするよりも前に、私の身体が動いていた。


「中谷さん、もうそのくらいで」

「え?」


中谷さんも、もちろん悪気は無かったのだけれど、社長と私の表情を見て、何かを察したようだった。


「あ、じゃあ、そろそろ。打ち合わせの件は、確認して連絡します」


そう言って、中谷さんはオフィスを後にした。
ため息をつく北原くんには社長が声を掛け、私は、オフィスを出た中谷さんを追った。
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